第3回「次世代の臨床外科医のための特別セミナー」に出席して

鹿児島県臨床外科学会副会長  前之原 茂穂

 2015年1月31日、2月1日の2日間にわたり東京で開催された日本臨床外科学会主催の第3回「次世代の臨床外科医のための特別セミナー」に出席しました。3回目の開催ですが若手外科医に好評であり今年も同様の企画で開催され小生は夏越会長の代理として参加し若手からは旧第一外科の田辺寛先生と旧第二外科の井上真岐先生が出席しました。

1日目は跡見裕会長の開会あいさつのあと、国立病院機構の桐野高明先生の「わが国の医療の選択」と題した講演とがん研有明病院の山口俊晴先生の「外科手術と保険制度」という内容で講演がありました。桐野先生はこれまでの日本の医療、実態を踏まえ今後のあり方、方向性を示されました。山口先生は欧米と比較しながら難易度に基づいた技術料の評価をすべきであると講演されました。

その後、手術手技パネル「内視鏡下手術の免許皆伝への道」続編と題し、昨年に続いてエキスパートのビデオ供覧がありました。今回は術中の出血、臓器損傷に繋がる危険な手技、あるいは臓器やその手術特有の注意点を行った手技などを示した後に若手が問題点や意見を述べるというスタイルでした。エキスパートに対し若手から手技について問題点を指摘する構成であり、最初、若手も緊張していましたが司会の岡島正純先生と木村泰三先生が雰囲気を和らげつつ手術ビデオのピットフォールを中心として討論が進み徐々に盛り上がりました。若手パネリスト6名の中に鹿児島大学の田辺先生が選ばれ討論の中でも的確な受け答えをして、講評でもいい評価を頂いていました。最後にエキスパートの先生がピットフォールの回避法や対処法、模範手技に関してビデオ供覧があり学会とは異なり若手を意識したパネル討論になりました。その流れで懇親会が開催され、小西敏郎先生の進行で企画も進み、若手パネリストが改めて紹介され高級ワインを一人ずつ贈呈されました。各テーブルで交流も進み、贈呈ワインも懇親会の途中からテーブルで若手から他県の先生にもふるまわれました。最後に女性外科医全員が登壇して自己紹介がありました。女性外科医も増加しており、鹿児島大学の井上先生も挨拶しましたが、今回は他県の先生方との良い交流になったようです。

2日目は「私が理想とする外科医」と題し二村雄次先生、呉屋朝幸先生、高野正博先生の講演がありそれぞれ外科医の先達として手術手技の工夫や学会発表、論文の重要性などを強調されました。ランチョン・セミナーでは宇山一朗先生が「ロボット手術の展望」と題し、局所合併症の減少と難易度の高い手術に対して有用性が出てくると話され、外科医は「温故知新」と同時に未来から学ぶ姿勢を熱く話されました。

閉会のあいさつでは副会長の炭山嘉伸先生が支部出席者のアンケート結果を参考に今後も若手外科医のセミナーを企画し、将来的には若手の国内留学もできるよう検討していると述べられました。

今回このような企画に参加する機会を頂き、夏越会長をはじめ鹿児島県臨床外科学会会員の皆様に心より感謝申し上げます。

 

 

鹿児島大学消化器・乳腺甲状腺外科  田辺 寛

 医局からセミナーの話があり,内容がよく分からぬまま参加を決めました.そしてセミナー一週間前に教授からパネリストになった旨を告げられ漠然とした喜びと不安を抱えながら会場の品川に向かいました.

 会場に着くと各都道府県から約150人の若手外科医が集まっておりましたが,学会等に比べるとこじんまりとした印象を受けました.

 御高名な先生方の講演では実際の臨床では知ることのできない日本の外科の実状や先人たちの生き様や知恵を学ぶことができました.特に,外科手術の診療報酬の海外との格差,宇山一朗先生のロボット手術が印象深かったです.

 一日目の夕方,超一流外科医による手術ビデオ供覧とその内容に対する若手外科医のパネルディスカッションという恐ろしい企画のパネリストとして壇上に上がりました.てっきり,若手同士のビデオセッションとばかり考えていたので,強烈な肩すかしをくらい面喰ってしまいました.がん研有明病院の比企直樹先生の供覧された腹腔鏡下胃切除時の出血のトラブルシューティングに関する意見を求められましたがたじたじでした.

 セミナーも大変勉強になりましたが,この会に参加して最も大きな収穫は,同世代の外科医と交流したことです.セミナーの後は懇親会が催され,同世代の外科医と様々なことを話し,刺激を受けました.同じような悩みを持っていたり,同世代ながら崇高な目標に邁進していたり,もんもんと大学院生生活を送っている自分にとって強烈な動機付けになりました.

 このような大変有意義なセミナーに参加させていただき誠にありがとうございました.今回受けた衝撃や悔しさを今後の臨床・研究に生かしていきます.