外科医とチーム医療 (前之原 茂穂先生)

 鹿児島県臨床外科学会 幹事 前之原茂穂先生

新しく安部政権がスタートして2ヶ月過ぎようとしています。

 わが国は超高齢化社会になり将来の医療・介護・福祉のビジョンが差し迫った課題です。一刻の猶予もありません。わが国がもっと住みやすい国になって次の世代に安心をもたらしてほしいと思います。

  昨年の特筆すべきニュースは山中伸弥教授が iPS細胞の研究でノーベル医学生理賞を受賞されたことでした。今後、難病治療に実用化できるよう研究も飛躍していくものと期待されます。山中先生は整形外科医としては不器用で手術も拙かったと謙遜されていました。しかし基礎的な研究で世界的な仕事につながっています。実は外科医にも共通した面があります。外科医は臨床現場で患者さんを治したい一心で手術、術後の治療に当たっています。

 しかし病気の進行が食い止められない場合、不幸な転帰をたどり無力感に苛まれる時もあります。このような経験をしながら、次のステップで基礎的な仕事、たとえば癌細胞の転移の研究や免疫の仕組みなど一見、外科医とは離れた研究をする時期があります。臨床現場で苦労し限界を感じたことが次の手術をする際は、このような基礎的な研究に触れることで、視野を広げ志の高い、情熱を持った外科医が育つと思います。

  最近の医療にはチーム医療が欠かせません。外科の手術はまさにチームワークそのものです。麻酔科医師、手術室器械出しの看護師、外回りの看護師などと手術が始まる前から確認し合い、手術中も手術後も声を掛け合い、器械を確認しています。患者さんの循環動態、呼吸状態なども急に変化があると直ちに報告します。このチームワークがあって初めて手術は成功します。

 外科医は今、手術以外の化学療法や緩和ケアなどさまざまな分野に関わっています。また他科の医師、看護師、薬剤師、放射線技師などとともに患者さんに寄り添っています。外科医は手術をして術後管理もしますが、当直などの外来、病棟の勤務も待っています。今後は勤務状態の改善も図っていく必要もあります。ゆとりのある鹿児島の若手外科医が国内外留学や研究にも関わり、それを臨床に生かし、チーム医療や連携がますます進化していくことを願っています。

 今後ともモチベーションの高い外科医が育つように本会も力を合わせたいと思いますのでよろしくお願い致します。    (鹿児島厚生連病院)