外科は楽しい(鹿児島県県立病院事業管理者 福元俊孝先生)

 fukumoto DR

 私はこれまで外科医になったことを後悔したことは一度もない。逆に好きだったからこそ、今まで外科医をやってこられたのだと思う。

 ところが最近、外科医を目指す医学生が減っている。

 “外科は、キツイ、訴訟リスクが高い、仕事にあった給料がもらえない”等、等、いろいろな理由が言われている。どれも正解でしょう。   

 しかし、一番の理由は、“外科の楽しさ、面白さ”というのが伝わっていないのでは、ないだろうか?

 外科の楽しさ、面白さとは何だろうか。一つには、(内科の先生には失礼だが)“内科医では絶対できないことが外科医にはできる”ことではないだろうか。それはメス等を使って切除する、縫合して新しい機能を創造する事だと思う(勿論、内視鏡でESDなどを施行する内科の先生も多くいらっしゃいます)。

 外科の面白さは、“自分で創造する”楽しさだと思う。診断は別として、手術は“創造する”以外の何物でもない。自分で“設計して、創る”、謂わば家を建てるのに似ている。どの手法によって、どの手順によってオペするか。

 勿論、がんの手術などは標準術式があって、大体決まっている。それでも、局所の状態によって、術者の技量によって全然違う。切除すればよいと頭では分かっていても、技術によって可能なこともあれば、不可能の場合もある。

 料理に例えると、同じ材料、調味料を使っても、プロと素人では美味しさがまるで違う。外科の手術はこれに似ているところがある。

 だからこそ、手術の醍醐味、楽しさがあるのではないだろうか。ロボットがすべてプログラム通りに手術をするようになったら、全然面白くも無いだろう。最近の医療機器の進歩によって、この差は著しく減少しているとは言え、それでも術者によって差があるから面白いのである。

 患者さんからみると、執刀医によって結果が違うなんてとんでもないと思うであろう。

 例えば、進行胃がんの手術なら、しっかりと切除、郭清、再建して、再発のない、そして摂食などQOLの保たれた出来上がりにならないといけないのは、言うまでもない。

 勿論、すべての外科医がそれも目指して手術している。しかし、料理と違って、個々の症例はすべて条件は異なる。それをいかに頭で理解して、設計をたて、技術によって成し遂げる。そこに面白さがある。

そして、手術が終わった後の充実感、満足感はやった者にしか分からない。是非、これから医師になる学生にもこの楽しみを味わって欲しいものである。