第2回「次世代の臨床外科医のための特別セミナー」に出席して

鹿児島県臨床外科学会副会長 前之原 茂穂

 2014年2月1日、2日に、東京で開催された日本臨床外科学会主催の第2回「次世代の臨床外科医のための特別セミナー」に出席した。昨年、若手外科医に好評であり今年も同様の企画でおこなわれた。小生は夏越会長の代理として参加したが、若手からは旧第一外科の野田昌宏先生と旧第二外科の川井田啓介先生が出席した。

 1日目は開会の辞のなかで跡見裕会長から昨年のセミナーの報告と各県支部の活性化についてもふれられた。本セミナーは今後も継続したい旨を話された。まず年金・健康保険福祉施設整理機構理事長で前・WHO西太平洋地域事務局長の尾身茂先生が「臨床外科医がよいかかりつけ医となるには」と題されて地域連携の必要性や低侵襲・機能温存手術の遂行、幅広い臨床能力を兼ね備えた真のプロとして外科領域の主治医機能を発揮していく内容の講演をされた。

 続いて慶応大学医学部消化器外科、弁護士、参議院議員の古川俊治先生が「外科医が知っておくべき法律と医療訴訟例」と題されて医療過誤の背景に医療安全対策の重要性の認識不足や医療水準が不十分な例をあげて責任性について講演された。また診療ガイドラインの法的意義について事故後の判断指針として参考にする事や薬剤の副作用に関する文献の参照など日常医療の中で実施していくEBMの重要性を話された。

 パネルデイスカッションでは「若き技術認定取得者から学ぶ内視鏡外科手術達人への道」のテーマで胃:大垣吉平先生(九州ガンセンター)、大腸:戸田重夫先生(虎の門病院)、胆道:北川美智子先生(亀田総合病院)、ヘルニア:斎藤健太先生(名古屋市東部医療センター)がそれぞれスキルアップを図るべくビデオをチェックし他人の手術を良く見て学ぶ姿勢を強調された。鹿児島県においても内視鏡技術認定医の育成が大切だと痛感した。

 2日目は特別シンポジウム「私が理想とする臨床外科医」があった。

 北野正剛先生(大分大学)は「低侵襲手術を目指して」と題して身体にやさしい手術を求めた外科医のトレーニングについて熱く語られた。さらに渡辺剛先生(金沢大学)のawake状態の心臓手術や加納宣康先生(亀田総合病院)の亀田病院方式(加納式)の外科医研修システムの講演があったがどの先生にも情熱とひたむきさを感じた。

 午後から「インフォームドコンセントの現状と問題点について」と題して跡見会長と中井美穂さんの司会でパネルがあった。基調講演で東大名誉教授の森岡恭彦先生が日本にふさわしいICの目的と理想を求めていく医療について講演され、引き続き討論があり患者や報道の立場、現場体験など各方面から討議された。

 2日間を通してテーマも多岐にわたり幅広い内容でよかったがやはり若い外科医にとって第一線で活躍している医師の講演は刺激になったと思う。今後もこのセミナーは開催されるが、鹿児島県の若手外科医の育成にも貢献するものと感じた。

 

鹿児島大学消化器乳腺甲状腺外科学  野田昌宏

 去る2014年2月1日~2月2日にグランドプリンスホテル新高輪で行われた臨床外科学会主催のセミナーに参加させていただきました。各県より外科医が集まっており、鹿児島県からは、鹿児島厚生連病院長の前之原茂穂先生、心臓血管・消化器外科学(旧第2外科)の川井田啓介先生と共に出席してまいりました。

一日目のセミナーでは臨床の第一線でご活躍の先生方をはじめ、尾身茂先生(年金・健康保険福祉施設整理機構)や古河俊治先生(医師・弁護士・参議院議員)など、幅広い分野からの講演を聞くことができました。また「若き技術認定取得者から学ぶ内視鏡外科手術達人への道」というパネルディスカッションで、それほど自分と学年の変わらない先生方が、内視鏡外科の技術認定を取得されており、見事な手術ビデオを提示しておられました。これには非常に刺激を受けました。テクニックはもちろん技術認定を目指す心構えなど、即実践可能な生きた知識を学ぶことができました。

 夕食は懇親会が開かれ、演者の先生方も一緒にお酒を飲みながら話をする機会がありました。普段話しかけることもできないような高名な先生方との距離が少しだけ縮んだような気がした一日目の夜でした。

 二日目のセミナーでは大分大学の北野正剛先生、金沢大学の渡辺剛先生、亀田総合病院の加納宣康先生による「私が理想とする臨床外科医」という特別シンポジウムがありました。外科医なら誰もが知っているような有名な先生方が若かったころにどのようなことを考え、どのような道を歩んでこられたのか。それぞれの先生方の個性と、医師としての情熱が感じられて非常に興味深い講演でした。

 二日間のセミナーを通して、外科医としての技術や心構えでなく訴訟やIC、社会制度まで多岐にわたる幅広く学ぶことができ、非常に有意義なセミナーでした。

 写真は二日目のパネルの司会をされていた中井美穂さんと鹿児島支部からの3人です。

 このような機会を与えてくださった鹿児島臨床外科学会会長の夏越祥次教授、会員の先生方にお礼申し上げます。

 

鹿児島大学心臓血管・消化器外科学 川井田 啓介
 平成2621, 2日の二日間, グランドプリンスホテル新高輪で開かれた「第2回次世代の臨床外科医のための特別セミナー」に参加してまいりました。‘臨床外科医がよい「かかりつけ医」となるには’(年金・健康保険福祉施設整理機構・尾身茂理事長)、に始まり, パネルディスカッション「インフォームドコンセントの現状と問題点」まで、外科臨床をとりまく諸問題について、各分野の第一人者たちを集めてのセミナーが企画されていました。頭の片隅では意識しているものの、日々の業務に追われ、日常臨床に埋没している中でどうしても後回しにしていた部分, しかしやがては避けては通れない課題について、いくばくかでも洞察を深めるきっかけになったと思います。

 その中でも印象深かったのが、外科医であり弁護士, 参議院議員でもある古川俊治氏の、外科医が知っておくべき法律と医療訴訟例についての講演の中であった、胃癌手術中に、予期しておらず、したがって術前に説明もされていなかった卵巣転移を切除し、後日訴訟となり敗訴した事例でした。また、2日目のセッションではNTT東日本関東病院でのICしていなかった手術を行った場合の問題例提示もあり、こういったシーンで外科医が法的にも正しい臨床判断を行うことの難しさを感じました。ただ、これは我々が皆法律家になるべきという話ではなく、古川氏のような人物、あるいは医療安全の面でのサポートといった、外科医をとりまく土壌、臨床に専念できる環境の充実が望まれることだとも思います。

 一方で、「私が理想とする臨床外科医」と題して、大分大学・北野正剛教授, 金沢大学・渡辺剛教授, 亀田総合病院の加納宣康外科主任部長が、三者三様の、眩いばかりの個性の煌きを放つ講演をされ、改めて日常臨床に埋没しているばかりの自分の不甲斐なさを感じたところです。また、同世代の内視鏡技術認定取得者によるセッションもあり、自分との意識の違いを実感し刺激にもなりました。

このような機会を与えていただきました鹿児島臨床外科学会関係各位の先生方に感謝申し上げ、報告にかえさせていただきます。ありがとうございました。